
フードデリバリーのmenuが撤退する。
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一般の人からすると「そうなんだ……」くらいのニュースかもしれない。
でも、その業界でご飯を移動させる仕事をしている自分にとっては、ちょっとした衝撃だった。
加えて言えば、自分はmenuのヘビーユーザーでもあるので、「不便になるな……」というショックもある。自分にとっては、そこそこインパクトの大きなニュースだった。
その上で、「だから何?」って話なんだけど。
今回のmenu撤退を見て、この業界は一つの分岐点を越えたんじゃないかな……と感じている。
そのことを書いてみたい。
フードデリバリー市場の成長期は終わった
| 年 |
市場規模 |
前年比 |
| 2016 |
3,770億円 |
+5.8% |
| 2017 |
3,857億円 |
+2.3% |
| 2018 |
4,084億円 |
+5.9% |
| 2019 |
4,183億円 |
+2.4% |
| 2020 |
6,271億円 |
+50.0% |
| 2021 |
7,878億円 |
+26.0% |
| 2022 |
7,740億円 |
-1.8% |
| 2023 |
8,603億円 |
+11.0% |
| 2024 |
8,078億円 |
-6.1% |
| 2025 |
8,240億円 |
+2.0%・見込み |
まず、フードデリバリー市場は急速な成長期を終えたと思う。
アプローチを変えることで、まだ市場を伸ばす余地はあるのかもしれない。
ただ、単純に「ご飯を家まで運ぶ」という現在のフードデリバリーの形だけで考えると、少なくともコロナ禍のような急成長期はもう終わったと見ていいと思う。例えば出前館の売上も、ここ数年は大きく伸びるというより横ばいに近い状態が続いている。
その市場から撤退する事業者が出てきている。
これは「これから市場全体がどんどん膨らんで、参加企業みんなが成長できる」という段階ではなくなったと判断の元での決断だと自分は見ている。
市場規模は、もう十分に大きい
| 国内市場 |
最新年 |
市場規模 |
デリバリー=1 |
| ペット関連 |
2024年度見込 |
1兆9,108億円 |
2.32 |
| 玩具全体 |
2025年度 |
1兆1,664億円 |
1.42 |
| ハンバーガーレストラン |
2025年見込 |
9,062億円 |
1.10 |
| ラーメン店 |
2025年度見込 |
8,855億円 |
1.07 |
| フードデリバリー |
2025年見込 |
8,240億円 |
1.00 |
| 玩具・主要10分野 |
2025年度 |
7,967億円 |
0.97 |
| 電子書籍 |
2025年度 |
6,846億円 |
0.83 |
| 動画配信(VOD) |
2025年 |
6,740億円 |
0.82 |
| レコード・音楽配信 |
2025年 |
3,988億円 |
0.48 |
| 映画興行収入 |
2025年 |
2,744.5億円 |
0.33 |
違う角度から見ると、フードデリバリー市場は約8,000億円ある。
ハンバーガーレストラン市場やラーメン店市場にかなり近い規模だ。
こうして比較してみると、フードデリバリーはもはや一部の人だけが使う特殊なサービスではなく、それなりに生活へ浸透した市場なんだなということが分かる。
そんなフードデリバリー市場、市場の成長サイクルで考えると、成長期の次に来るのは成熟期だ。
市場そのものが大きくならなくなると、今度は限られた市場の中でシェアを奪い合うことになる。
そう考えると、menuがこの競争の中で生き残るために大量のリソースを投下し続けるより、撤退を選んだこと自体は合理的なんだと思う。
「次は出前館……?」みたいな空気も一部にはあるけど、それがどうなるかは分からない。
ただ、市場全体が昔のような成長局面ではなくなった。
自分にとっては、そこが今回のニュースで一番大きい。
市場が伸びない中での消耗戦
市場の成長が止まり、シェア争いに入ると、次に起きるのは他社のお客の奪い合いになる。
ところがフードデリバリーは、この囲い込みが難しい。
スマホにUber Eats、出前館、menuと複数のアプリを入れておけば、客はその日の値段やクーポンを見て簡単に移動できる。
「今日はUberが安い」
「menuにクーポンが来た」
「出前館の方が得だ」
それだけで移動できる。
だから各社はクーポンやキャンペーンを打ち続けることになる。
つまり今後は、単純に市場の成長に乗って売上が増えるというより、限られた客を奪うために、どれだけお金を使えるのかという資金力勝負になっていく。
では、その資金をどこから出すのか。
借りてくる。
親会社から投下してもらう。
広告費やキャンペーンの使い方を変える。
そして当然、経費も削る。
その経費の一つに、配達員への報酬も入ってくる。
だから配達員の立場から見ると、今後、報酬がどんどん上がっていく未来はあまり想像しにくい。
ただし、一方では配達員を安く使いすぎると、今度は他社へ逃げてしまう。
Uberの報酬が安ければ出前館へ行く。
出前館が安ければUberへ行く。
配達員側もアプリを移動できる。
だから企業としても、配達員を確保できる最低限の報酬は出さないといけない。
そのせめぎ合いの中で、今後の配達報酬の水準が決まっていくんだと思う。
だったら、配達員はそこそこ安泰なのでは?
とも思える。
でも、自分はそうでもないと思っている。
企業からすれば、最終的には「人間が運ぶ」という部分そのものが大きなコストだと判断するはずだと思っている。
そのカギとなるのが配送ロボット。
もちろん、明日いきなり街中の配達員がロボットに置き換わるとは思っていない。
道路事情もあるし、マンションもあるし、階段もあるし、日本の街中で全部をロボットに任せるのは簡単ではない。
ただ、市場が成長している間なら、人を増やして売上を伸ばすという選択もできる。
市場が伸びなくなれば、今度は同じ売上からどうやって利益を残すかという話になる。
そうなれば、人件費を減らせる技術への圧力は当然強くなる。
配達員から見ると、かなり嫌な話だけど。企業側から見れば、そうする理由は十分にある。
そんなわけで、menu撤退という一つのニュースを見て、自分は単に「使えなくなって不便だな」とは思えなかった。
この業界そのものが次のフェーズに入りつつある。
市場が伸びる時代から、限られた市場を奪い合う時代へ。
その先では、企業同士だけではなく、配達員自身も淘汰される可能性がある。
自分は会社に雇われているわけではない。
「仕事が減りました」
「報酬が下がりました」
「ロボットに置き換わりました」
となっても、どこかに文句を言えば何とかしてもらえる立場でもない。
良くも悪くも自己責任だ。
だから、「その時が来てから考える」では遅いんだろうなとは思っている。
じゃあ具体的に何をするのか。
そこまでは、まだ答えが出ていない。
ただ、少なくとも「この仕事をこのままずっと続けられる」という前提では考えない方がいいんだろうな、とは思う。
menu撤退のニュースを見ながら、そんなことを考えた。
まあ、頑張るしかないですね。